広告を出しても予約が増えない。SNSのフォロワーはいても来院につながらない──。
美容クリニックの経営者が直面しがちなこの悩み、原因は本当に“広告の弱さ”や“競合の増加”だけなのでしょうか?
実は、見落とされがちなのが「受付対応」です。
患者とのやりとりが事務的すぎて、信頼を築く前に脱落を招いているケースは少なくありません。
本記事では、予約数のボトルネックが“受付”にある理由を、具体例とともに解説します。
「スタッフが寄り添っていない」と感じたときに、教育ではなく“設計”で改善する方法にも触れていきますので、
予約率を上げたい経営者・院長の方は、ぜひ最後までご覧ください。
広告の効果が出ない──その原因、本当に“外”にありますか?

広告やサイトばかり見直していませんか?
広告を回しても、予約が思うように増えない。そんなとき、まず疑われるのは「広告文言」「LPの訴求内容」「ターゲティング設定」など、いわゆる“外向き”の要素です。
もちろん、これらが原因の場合もあります。しかし──すでにクリックや問い合わせが発生しているなら、患者様は“興味を持っている”状態にあるということ。
それでも予約が成立しないのだとすれば、問題はむしろ、内部にある可能性を疑うべきです。
見落とされがちなのが、「受付対応」。
患者様が予約しようとしたとき、「最初に接する“人間の言葉”」こそが、来院を決める最後の一押しになる場面は多くあります。
もしその対応が機械的で冷たく見えたら? 患者様は、もう一歩踏み出す気持ちを失ってしまうかもしれません。
なぜ“患者様の離脱”は受付で起きるのか?

1. 広告は届いている。でも「返信」で気持ちが離れる
実際、広告からのクリック数やお問い合わせ件数に問題がないにもかかわらず、「予約に進まない」「来院につながらない」という相談は非常に多くあります。
この段階での離脱は、受付からの返信が“冷たい”“怖い”“不安になる”と感じさせている可能性があります。
たとえば、「※まだ予約は完了していません」という文面。
スタッフ側としては正確に伝えているつもりでも、患者からすれば**“警告”のように見えることがあります。
それどころか、「何かミスをしたのでは」「まだ許可されていないのか」といった“歓迎されていない印象”すら与えかねません。
以下は、実際に美容医療の現場で使われていた初診案内の一文です。
ご相談ありがとうございます。
※まだご予約は確定しておりません
※ご希望の方は、以下の内容をご記入のうえ、ご返信ください。
内容確認後、予約日程についてご連絡いたします。・現在治療中のご病気、内服中のお薬(お名前・服用回数)
・美容医療のご経験(過去の施術名と時期)
※肌の状態によっては、ご希望の施術をご案内できない場合がございます。あらかじめご了承ください。ご不明点がある場合には、お問い合わせください。
一見、必要な情報をきちんと伝えているようにも見えます。
しかし、患者様の目線で読んでみると、事務的で無機質な印象を受けるのではないでしょうか。
- 開始早々「まだ予約は確定していない」と強調され、不安感を煽る
- 一方的に情報提供を求められ、“お願い”より“指示”に感じられる
- 「肌の状態によっては施術できない」という断定的な表現が、否定されるようで怖い
- 患者様が送った“予約希望日”への言及が一切ないため、話が通じていないと感じさせてしまう
この最後の点は特に見落とされがちですが、患者様にとっては「ちゃんと読んでくれていない」=「大事にされていない」という印象につながります。
たとえ情報収集としては正しいステップでも、こうした“温度のズレ”が、予約からの離脱を招くのです。
2. 受付対応は「クリニックの顔」なのに、軽視されがち
多くの経営者は、広告の文言や診療メニューの細部には目を光らせます。
けれど、実際に患者様とどんなやりとりが交わされているか──特に受付から送られる返信の文面を見たことがある方は、意外なほど少ないのではないでしょうか。
しかし患者様にとっては、その返信こそが**“クリニックの人となり”を初めて知る瞬間**です。
どれだけ医師の腕が確かでも、施術内容に魅力があっても、受付対応に違和感を覚えた時点で「ここはやめておこう」と判断されることもあります。
見えないから気づけない、“感じの悪さ”
患者様は「このクリニックにお願いしても大丈夫か」という安心感を求めています。
でも、返信文に以下のような印象を抱いたとしたらどうでしょうか?
- 「冷たい」
- 「機械的」
- 「話が通じてない」
- 「こちらの気持ちは無視されている」
一つひとつは小さな違和感でも、それらが積み重なれば“このクリニックはやめておこう”という判断に直結します。
経営者は“最後の接点”ではなく、“最初の接点”をチェックすべき
広告やカウンセリングには力を入れていても、「予約返信文」のチェックは後回し。
しかし、返信文の“温度”が、その後の来院・成約を大きく左右しているのです。
特に今の患者様は、複数のクリニックに同時に問合せをしています。
その中で、「感じが良かったからここに決めた」というケースは非常に多い。
逆に言えば、“受付の印象”が全体評価を決めるといっても過言ではありません。
チェックするのは内容ではなく、“感じ方”
重要なのは、「情報が正確か」ではありません。
それよりも、「この文章を読んで安心できるか」「大切に扱われていると感じるか」。
つまり、“感じ方ベース”での見直しが必要です。
一度、自分が患者様の立場だったらどう思うか──そういう視点で、返信文を読んでみてください。
3. ちょっとした“温度差”が、大きな離脱につながる
患者様がクリニックを選ぶとき、注目しているのは施術内容だけではありません。
「この人たちに任せて本当に大丈夫だろうか」という、人としての信頼感が何よりも重視されます。
だからこそ、メールの文面ににじむ“言葉のあたたかさ”や“対応の丁寧さ”、返信までのスピードといった細やかな要素が、来院を後押しする決定打になるのです。
たとえば、「キャンセル承知しました」とだけ返された場合──
患者様のなかには、「なんだか突き放された気がする」と感じてしまう方もいるかもしれません。
そこに、「またのご相談をお待ちしております」と一言添えるだけで、印象は驚くほどやわらぎます。
美容医療における予約行動は、単なるスケジュール調整ではありません。
患者様は、自分の体や顔に関わる不安や希望を抱えて連絡をくださっています。
その緊張感や迷いの最中に、「この人たちは自分の気持ちを汲み取ってくれそうか」という判断が、ほんの一文で下されてしまうことがあります。
“冷たく感じた”は、もう一歩が踏み出せない理由になる
たとえば、キャンセルに対する返信が「承知しました」の一言だけだったとしたら──
患者様の側は、どんな気持ちになるでしょうか。
「怒らせてしまったかもしれない」
「迷惑だったのかな」
「事務処理で終わったんだな」
何も悪気がなかったとしても、そこに“人”の温度を感じられないと、不信感だけが残ってしまいます。
技術や設備の前に、“安心して相談できるか”が問われている
広告やカウンセリングでいくら技術力をアピールしても、その手前で「感じが悪い」と思われてしまえば、すべてが水の泡です。
クリニックの信頼は、「何を提供するか」だけでなく、「どんな人に任せるか」で築かれています。
患者様が本当に求めているのは、施術そのものではなく、“この人たちなら任せられる”という安心感です。
そしてその安心感は、受付からの一言で育まれることも、壊れることもあるのです。
見えない“離脱ポイント”に気づけるかが、経営の差になる

患者の予約行動は、広告・サイト・返信・カウンセリングといくつかのステップで構成されています。
このうち、「受付の返信対応」はもっとも見えにくく、かつ影響力が大きい工程です。
だからこそ、“気づいていない離脱”が積み重なっている可能性があるのです。
広告費を増やす前に、まず一度。
あなたのクリニックの「返信文」、最近ちゃんと目を通しましたか?
寄り添い対応は“教育”ではなく“設計”で変えられる

「寄り添いなさい」と言っても、スタッフは変わらない
受付の対応が「冷たい」「共感がない」と感じたとき、つい口にしてしまいがちなのが「もっと丁寧にして」「気持ちに寄り添って」などの指導です。
しかし、その声かけだけでは何も変わりません。
なぜなら、スタッフ自身は「悪いことをしている」という自覚がないからです。
むしろ、「ルール通り、正しく、ミスなくやっている」と思っている。
共感力がないわけではなく、そもそも“自分の仕事としての意味”を理解していないのです。
だから必要なのは、“教育”ではなく“設計”。
感情に頼らず、誰がやっても一定の温度が伝わるように、伝え方そのものを設計すること。
これこそが、経営者にしかできない領域です。
自分事化できないスタッフの認知構造

スタッフが「寄り添えていない」ことに気づいていない理由
受付スタッフが“寄り添った対応”をしていないように見えるとき、
それは必ずしも「性格が冷たい」わけではありません。
むしろ、「自分は丁寧にやっているつもり」「必要事項を正しく伝えている」と思っているケースがほとんどです。
つまり問題は、“どの基準で仕事をしているか”。
多くの現場では、業務を「こなすこと」自体がゴールになってしまっているのです。
「誰かと向き合っている」感覚が薄いと、すべてが作業になる
たとえば、患者様からの返信に記載された予約希望日をスルーし、定型の案内だけを返してしまう。
それは、「読んでいない」のではなく、“業務手順を進めること”が優先されているからです。
対応が“患者様との対話”ではなく、“社内フローの消化”になっている状態です。
そうなると、文面はどこか無機質になり、結果として「冷たい」「話が通じてない」と思われてしまう。
本人に悪気がないだけに、問題は繰り返されていきます。
「名前を出すか」は“信頼関係の設計”である
こうした“他人事感”を変える上で、意外と効果的なのが「スタッフ名を添えること」です。
患者様は自分の名前を名乗って連絡しています。
それに対して、無記名で返されると、「ちゃんと見てもらえているのか」「誰とやりとりしているのか」が分からず、不安になります。
逆に、相手の名前が添えられているだけで、“人と話している”実感が生まれ、信頼感が生まれます。
もちろん、昨今は個人情報への配慮も必要です。
スタッフが本名公開に抵抗を感じるなら、部署名+イニシャルや固定ハンドルのような工夫でも構いません。
重要なのは、誰がこの対応を担っているのかが“見える化”されていること。
それが、スタッフの側にも「自分がこの仕事に責任を持っている」という感覚を生み出します。
「寄り添いテンプレ」の力
感情に頼らなくても、“伝え方”を設計すれば印象は変えられる
「寄り添って対応しなさい」と言われても、スタッフ側からすればどうしていいか分からないものです。
だからこそ、寄り添いの姿勢そのものを“テンプレート化”するという発想が必要です。
大切なのは、感情を込めることではなく、感情が伝わる“構造”を作ること。
ほんの一言、文末に添えるだけでも、印象は驚くほど変わります。
“言っていることは同じ”でも、“伝わり方”はまったく違う
以下は、美容クリニックの現場でありがちなやりとりを、事務的対応と寄り添い対応で比較したものです。
両者が伝えている「事実」は同じですが、患者様が受け取る印象はまったく異なります。
| ケース | 事務的返信 | 寄り添い返信(改善案) |
|---|---|---|
| 初診案内 | ※まだご予約は確定しておりません。 以下の情報を記入のうえご返信ください。 | ご相談ありがとうざいます。 あいにくご希望の時間帯ではご予約がお取りできませんでしたので、〇月〇日13:00~でご予約をお取りしました。 変更ご希望の場合は、お手数ですがその旨ご連絡いただければ幸いです。 また、ご来院日までに以下について回答をお願いいたします。 |
| キャンセル時 | キャンセルの旨、承知しました。 | ご連絡ありがとうございます。 またのご相談を心よりお待ちしております。 ご不安なことがございましたら、いつでもお知らせくださいね。 |
| 症例写真の有無の問い合わせ | 写真はございません。 | お問い合わせありがとうございます。 当院は開院から日が浅いため、長期経過写真のご用意はございませんが、1年後の経過例などはカウンセリング時にお見せ可能です。 カウンセリングは無料ですので、ご都合の良い時にぜひご来院ください。 直近ですと〇月〇日(火)12:00~、15:30、〇月●日(日)13:00などでご予約いただけます。 先着順となりますため、ご返信までに埋まっている可能性もございます。予めご了承ください。 参考になりましたら幸いです。 |
“同じ内容なのに、なぜこうも印象が違うのか?”
上記の比較表を見ると、伝えている内容に大きな差はありません。
それでも、受け手の印象には明確な“温度差”が生まれています。
なぜその差が生じるのか、3つの観点で見ていきましょう。
1. 「目の前の人に向けて書いているか」の違い
事務的返信は、正確でも“誰に向けて書かれているのか”が見えづらいことがよくあります。
一方、寄り添い返信は「あなたのご希望を読みました」「そのうえでご案内しています」という双方向性が明確に伝わります。
テンプレかどうかではなく、“自分宛ての言葉かどうか”が信頼の分かれ目です。
2. “否定”ではなく、“提案”で返しているか
事務的返信は「できません」「ありません」といった“否定で終わる”ことが多くあります。
寄り添い返信は、「それは難しいけれど、代わりにこの選択肢があります」といった“導く言い方”が組み込まれています。
患者様は“断られた”と感じず、“提案してもらえた”と感じるかどうかで印象が大きく変わります。
3. “人の気配”があるかどうか
無記名・定型的な文面は、患者様にとって「誰が対応しているのか分からない」「ロボットのように感じる」といった不信感につながります。
名前を添える。気遣いの言葉を一言添える。文末の表現を少し柔らかくする──
それだけで、“この人が自分のために対応してくれている”という温度が伝わります。
「スキル」ではなく「設計」で誰でもできるようにする
ここ重要なのは、これらをスタッフの“センス”や“共感力”に委ねないことです。
寄り添い対応は、仕組みとして再現可能にすることができます。
たとえば
- テンプレートの冒頭と締めに、安心を伝える一文を含める
- 返信時に、患者様の文面から一文引用することをルール化する
- 否定表現には、必ず代替案や補足情報を添える
こうした工夫により、スタッフの個性や感情に頼らずとも、「感じのよい返信」を安定的に実現できる体制がつくれます。
「寄り添い対応」は、教育ではなく設計で解決できる
患者様が「ここに行こう」と思えるかどうかは、技術や価格より前に、“感じのよさ”や“信頼できそうか”という感覚的な部分で決まります。
そして、その“感じのよさ”は受付からの一通の返信文でも十分に伝わってしまうものです。
だからこそ、「もっと丁寧に」「寄り添って」と精神論で押すのではなく、
誰が書いても伝わる言葉になるよう“設計”することが経営者の役割です。
- どんなトーンで、どう書けば安心感が伝わるか
- どこに名前を添えるべきか
- どこまで柔らかくすれば“軽く”なりすぎないか
こうした“患者様の感じ方”に向き合いながら、
現場の温度を仕組みで整えることが、ブランドの信頼をつくる起点になります。
予約が増えないとき、見るべきは広告ではなく“受付の返信”かもしれない

「予約が増えない」「広告が効かない」──そう感じたとき、
多くの経営者は外部要因に目を向けます。広告運用の見直し、LPの改善、SNSの強化。
もちろん、それらも大切です。
でも、本当に見直すべきなのは、クリニックの中にある“見えない離脱ポイント”かもしれません。
受付からの返信文。
患者様が初めて受け取る、あなたのクリニックの“声”です。
その文面が事務的すぎたり、感情を遮断したような印象だったりすると、
どれだけ素晴らしい施術を提供していても、「なんとなくやめておこう」と判断されてしまうことがあります。
患者様は、施術を受ける前に、**“人間として向き合ってもらえるか”**を見ています。
そこに応えるために必要なのは、押し付けや指導ではなく、誰もが自然と“丁寧になれる”設計です。
もし最近、予約率や来院率にモヤモヤを感じているなら──
まずは一通、あなたのクリニックから患者様へ送られているメールやLINEの返信文を読み直してみてください。
改善のヒントは、案外すぐそこにあるのかもしれません。
