美容クリニックの接遇分断─受付と看護師のすれ違いを“白”に変える職域デザインとは

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「施術室へのご案内は看護師の担当です」

その言葉の裏側に、なにか小さな“すれ違い”を感じたことはありませんか?

受付、看護師、経営者──それぞれが「自分の色」を持ちながら、患者様に届けたい“白い体験”が、どこかで分断されてしまう現実。

本記事では、美容クリニックでよく見られる職域の境界線が、なぜ連携を妨げてしまうのかを、「光の三原色」の比喩を通じて読み解きます。

スタッフのせいではなく、経営設計にヒントがある。
“混ざり合う組織”をどう育てるか、その答えを探るヒントにしていただければ幸いです。

その“すれ違い”、患者様には見えています

「予約の電話は受付の仕事」「施術室への案内は看護師の担当」──
美容クリニックでは、職域がある程度明確に分けられていることが一般的です。
しかし患者様にとっては、それらすべてが“ひとつづき”の体験であることを、私たちはつい忘れてしまいがちです。

たとえば、予約時に聞かれた内容が当日伝わっておらず、もう一度同じことを尋ねられた。
受付では丁寧に案内されたのに、診察室では事務的に処理されたように感じた。
──そうした小さな違和感は、やがて「このクリニック、なんとなく雑だな」という印象につながります。

もちろん、それぞれの担当が忙しいのは事実です。
でも問題は、「自分の役割はここまで」と線を引いてしまう意識にあります。
それぞれが“自分の仕事”だけに集中した結果、患者様の体験が分断されている
私たちが見落としがちなこの構造を、「光の三原色」という比喩で読み解いてみたいと思います。

1. “私はここまで”思考が組織を分断する

1-1. サイロ化する接遇

「受付は予約管理と会計、看護師は施術とアフターケア」──
このように役割が分かれているのは、美容クリニックとして当然のことかもしれません。
けれど、分担がそのまま「分断」になってしまうことがあります。

たとえば、受付は患者様に丁寧に対応していても、看護師との間に引き継ぎがなければ、「また同じ説明をされた」「施術前の不安が共有されていなかった」といった形で、体験の質が下がってしまいます。
これは、個々の対応に問題があるのではなく、「自分の仕事はここまで」という意識が生む“サイロ化”です。

お互いに悪気はなく、むしろ思いやりもある。
けれど、職域が固定化されている組織では、「私は私の色だけをしっかりやる」が美徳になり、結果として“白い体験”から遠ざかってしまうのです。

1-2. 見落とされがちな業務の“色ズレ”

接遇に限らず、バックヤード業務にもこの“色のズレ”は存在します。
たとえば、あるスタッフは「発注は私の仕事」としてこなしていても、新しい商材のリサーチや見積もりの比較は「他の誰かがやること」だと思っている。

また、問い合わせメールに対してテンプレートで返信してはいるけれど、内容に違和感があっても「決まっているものだから」と手を加えない。
こうした場面では、「業務=処理」で止まってしまっているのです。

業務がただの“色”で終わっている限り、それが全体として“白”に混ざることはありません。
本来、どの仕事も「体験の一部」であるはずなのに、それを認識しないまま、色は混ざらず孤立していきます。

1-3. 「来てからが私の仕事」という前提

看護師も受付も、患者様への思いやりを持って働いている。
でも、現場で会話をしていると、どちらも「患者様が来てからのこと」しか考えていないと感じることがあります。

「予約が少ない日ですね」「最近モニター応募が減りましたね」とは言っても、それを“自分たちの責任”とは思っていない。
集客は経営者の仕事であり、自分たちは対応するだけという意識が根深くあります。

けれど、小規模なクリニックほど、スタッフ一人ひとりの“動き方”が集客にも直結します。
実際、モニター写真や口コミ対応などは、広報担当がいない現場では受付や看護師が担うべき生命線です。
にもかかわらず、そこまでを「職域」として認識されていない。
それは、経営者側が“その色”を最初から与え忘れているという側面もあるのです。

2. 光の三原色と“白い体験”の関係

赤・緑・青──これは光の三原色と呼ばれる色の基本構成です。
この3色すべてがバランスよく揃って重なると、私たちの目には“白”として映ります。

組織の職域や役割も、実はこれとよく似ています。

ここで言う赤・緑・青に厳密な意味や固定された職種割り当てはありません。
ただ、それぞれが“異なる色”であること、そして“白”は混ざり合わなければ生まれないということだけ、押さえておいてください。

あえて例えるなら──

  • 赤は、患者様とのファーストコンタクトや熱意ある集患・広報、即座の対応といった、情熱やスタート、行動力を象徴する色かもしれません。
    受付業務やマーケティング、経営者のリードがこれに近いと捉えることもできます。
  • 緑は、患者様の心に寄り添うカウンセリングや施術中の細やかな気配り、アフターケアにおける安定性や安心感、調和を示す色でしょう。
    看護師やカウンセラーの役割が当てはまるかもしれません。
  • 青は、冷静な状況分析、オペレーションの設計、品質管理といった、組織を俯瞰し、構造を整える色です。
    経営層やマネジメント層、あるいはバックヤードでシステムを構築する役割が該当するかもしれません。

どれか1色でも欠けてしまうと、“白”にはなりません。
赤と緑だけでは黄色に、青と赤ではマゼンタに──
つまり、2色の世界では不完全な“色止まり”の組織になってしまうのです。

このとき、それぞれの職域が「自分の色」だけに集中していたら、どうなるでしょうか。
どれだけ丁寧な接遇をしていても、どれだけ正確な処置をしていても、それが混ざり合わなければ、患者様にとって“白い体験”にはなりません。

色が揃っていても、混ざらなければ意味がない。

問題は色の“濃さ”や“彩度”ではなく、混ざる設計と意識があるかどうか──
それが、クリニック全体で“白”を生み出すかどうかの分かれ道になります。

あなたのクリニックでは、どの色がどの役割を担っていると感じますか?
そして、それらの色はきちんと混ざり合っているでしょうか?

3. 組織の色指定の曖昧さがズレを助長する

現場のスタッフが「自分はこの色」と決め込んでしまう背景には、
そもそも経営側の“色指定”が曖昧であるという問題があります。

「あなたには受付だけでなく、広報的な視点も期待している」
「このポジションでは、患者様全体の体験設計にも関わってほしい」
──そうした“色の混ぜ方”が、経営から明確に伝えられていないことは意外と多いのです。

役割分担はされていても、「なぜその役割があるのか」「その役割がチーム全体の中でどう機能してほしいのか」といった構造的な視点が共有されていない

その結果──

  • 経営者は「彼女は“青”の役割も担ってくれている」と思っている
  • 本人は「私は“緑”担当」としか思っていない
  • 他のスタッフは「この人、結局どの役割なの?」と感じている

というふうに、色の見え方・期待の仕方・自認がすべてバラバラになってしまいます。

これでは、いくらスタッフを採用しても、マニュアルを整備しても、
組織全体で“白”を生み出すことはできません。

本来、経営側の役割は「色を指定すること」ではなく、色がうまく混ざる設計図を描くことです。
そして、それを現場に言語化して渡すことです。

「何色であるべきか」ではなく、「白にするにはどう混ざればいいか?」──
その視点が抜け落ちている組織では、現場と経営の“すれ違い”は、むしろ必然なのかもしれません。

4. “白”を実現する職域デザインのヒント

色が揃っていても、自然には混ざりません。
“白い体験”を生み出すには、それぞれの色がどう交わるべきかを、組織として意図的に設計する必要があります

ここでは、混ざり合うための実践的なヒントをいくつかご紹介します。

4-1. 共通目標の設定とKPIの再設計

たとえば「患者満足度」や「クチコミ評価」といった目標を、
受付・看護師・施術者・カウンセラーなど全職域で共有しているでしょうか?

「うちは評価高いよね」で終わらず、具体的な数値や事例をもとに、
誰がどの部分で貢献できたのかを可視化する。それが“混ざる”第一歩です。

個人単位ではなく「チーム全体の体験」をKPIとして扱うことで、
それぞれが「自分の色の外側」を意識し始めます。

4-2. 横断的なコミュニケーションとルールづくり

情報共有や意識のすれ違いは、「見えていないだけ」で起きていることも多いです。

  • 受付と看護師が週1回だけでも共有の朝礼を行う
  • 患者様の不安や声を、担当外の職種にも簡潔に共有するルールを設ける
  • “誰が何を知っているべきか”を、あらためて設計し直す

これらの取り組みは、「誰の色を、どこまで混ぜるか?」という問いに答えるための下地になります。

4-3. 教育・研修・評価制度の再構築

実は多くの現場で、“色を混ぜること”は評価されません。
だから皆、それぞれの“色らしさ”を一生懸命に磨こうとします。

ですが、組織に必要なのは「色らしさ」だけではなく、「色を溶かす力」です。

  • 他職種の業務理解を深める研修
  • 接遇のトーンを統一するためのOJT
  • 「連携貢献」に対する評価制度の明文化

こうした設計があることで、スタッフ一人ひとりが
“自分の色を自覚した上で、混ざるための動き”を取れるようになります。

“白”をつくるのは、特別な人材や才能ではありません。
構造と意識が、色を混ぜられるように設計されているかどうかなのです。

5. 混ざる力を育てる─問いかけと行動への誘導

“白い体験”は、誰か一人の努力でつくれるものではありません。
一人ひとりが「自分の色」だけに閉じこもらず、混ざる力を持てるかどうかが鍵です。

ただし、それは「なんでも全部やれ」という意味ではありません。
職域はあっていい。むしろ、色が明確であることは大切です。
大切なのは、その境界が「線」ではなく「グラデーション」になっているかどうかです。

経営者が今すぐできる問いかけ

  • 「この職種には、どんな色を期待しているだろう?」
  • 「スタッフ自身は、自分の色をどう認識しているだろう?」
  • 「その色は、混ざることを前提に設計されているだろうか?」

これらを考えてみるだけでも、組織の見え方は少し変わるはずです。

行動を促す一言

あなたのクリニックでは、どの色が混ざっていないと感じますか?

その色は、そもそも「混ざるように与えられている色」でしょうか?
それとも、「自分で色止まりにしてしまっている色」でしょうか?

まずは、境界を少しだけ溶かす会話から始めてみませんか。

患者様にとって、“白い体験”は一続きです。
あなたのチームは、その白を、誰と一緒につくっていますか?

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この記事を書いた人

NRSK JAPANのアバター NRSK JAPAN ビューティメドラボ代表

美容医療業界において、経営、マーケティング、店舗開発、運営などあらゆる分野で豊富な経験を持つエキスパート。いつか誰かの役に立つ人になりたくて「ビューティメドラボ」を開設。加速する老化に逆らいながら、化粧品検定3級の資格を活かしてこれまでに培ってきた知見を書き残しています。
令和3年12月9日:初めての美容クリニック開業まるわかりガイド執筆開始(すぐに頓挫する)
令和6年7月1日:ビューティメドラボ公開
令和6年8月31日:化粧品検定3級合格
防火管理者としての経験も併せ持つマルチな才能を存分に発揮すべく、ビューティメドラボの更新活動を精力的に行っている。