美容クリニックの開業では医療機器と患者がリラックスできる内装が欠かせません。本記事では、美容クリニックの開業に必要な設備と内装の最低スペックとなるポイントを解説します。これから開業を目指す方々にとって、実践的なアドバイスになるよう、理想のクリニックを実現するためのヒントをお届けします。
物件の選び方などはこちらで解説しています。

最低限スペックとなる診療メニューの定義
最低スペックの美容クリニックとして考えられる診療メニューには、ヒアルロン酸などの注入専門クリニックやAGA・FAGAなどの薄毛治療専門クリニックがあります。しかし、これら単体メニューのクリニック開設を目指される方は非常に少ないと思いますので、今回は以下の診療メニューを想定して解説します。
- 美肌・たるみ治療:肌の若返りやリフトアップを目的とした治療。
- 糸リフト:顔のたるみを改善するための非外科的リフトアップ。
- 脱毛:レーザーや光を用いた永久脱毛。
- 二重術(埋没・切開):目元の美しさを引き立てるための二重まぶた手術。
- 機械痩身:脂肪を減少させるための非侵襲的な痩身治療。
この程度の診療メニューが美容皮膚科としては一般的なラインナップではないでしょうか。
医療機器
美容クリニックの必須医療機器は、それぞれ特定の治療目的に応じた波長での治療が必要になりますが、1台でマルチに稼働する機種は非常に少ないので複数台の導入が必須です。
以下では、それぞれの機器について認知度の高い機器を例に解説します。
注意: 本記事は医療関係者向けに独自の見解をメモ書きとしてまとめたものであり、誤った情報が含まれている可能性があります。特に無資格者は本記事の内容を鵜呑みにせず、必ず主治医の指示・見解に従ってください。
エレクトロポレーション
例:ケアシス
エレクトロポレーションは、皮膚に微小な電流を流すことで細胞膜に一時的な孔を開け、美容成分や薬剤を深部まで浸透させる技術です。痛みやダウンタイムが少なく、肌のハリや潤い、色調の改善に効果的です。
ケアシスはエレクトロポレーション(無針メソセラピー)の技術を用いた美肌治療機器として認知度の高い機種ですが、イオン導入機で済ませているクリニックも多いので、治療方針によって導入する必要はないでしょう。
IPL
例:M22
美容皮膚科でIPLを導入しないクリニックはないと言われるほど、導入が必然とされる機器としてIPLが挙げられます。
IPL(Intense Pulsed Light)は、広範囲の波長を持つ光を用いることで、肌のシミやそばかす、赤ら顔、毛穴の開きなどを改善します。ルミナス社のM22は、連続照射でも一定した熱量で出力できると評されており、最古参IPLメーカーとしての信頼性と人気が非常に高いです。顧客認知度も高く、多くのクリニックで採用されていますが、やはりネックは導入コストの高さです。しかし特定用途では厚労省の薬事承認を受けている管理医療機器のため消耗品の調達スピードが速いです。(あまり買う機会はありません)
正式にフォトフェイシャルとして集客するには、ルミナス社のIPLを購入する必要があります。また、顧客ニーズと作業効率を無視すれば、脱毛治療にも使用可能です。
RF
例:POTENZA
RF(高周波)エネルギーを利用した美肌治療機器です。RFは皮膚の深部まで到達し、コラーゲンの生成を促進することで、肌の引き締めやしわの改善に効果を発揮します。Jeysis社のPOTENZAは、グリッド状のチップのほか、微細な針とドラッグデリバリー機構を備えたチップもラインナップしており、ニキビ跡治療にも高い効果を発揮します。
皮膚のリモデリングを促進する方法としてはダーマペン4も検討材料として挙げられますので、RFの効用と導入価格の比較をしたうえで採用すればよいでしょう。ダーマペン4であれば導入価格は1/10~1/20程度で収まります。
Nd:YAGレーザー
例:エクセル
Nd:YAGレーザーは、深部に到達する1064nmの波長を持ち、血管治療や色素病変の改善に広く使用されてきました。特にピコレーザーが登場する前は、シミ治療やリジュビネーション(肌の若返り)において主力のレーザーとして選ばれていました。
キュテラ社のエクセルは、Nd:YAGレーザーを搭載した多機能な美容治療機器で、532nmと1064nmの2つの波長を持ち、浅い層から深い層まで幅広い皮膚トラブルに対応できます。
血管治療
特に血管拡張症(赤ら顔や毛細血管拡張症)に対する効果が高く、血管病変の治療に優れています。
色素病変の改善
シミや肝斑、そばかすなどの色素性病変に対しても効果的で、肌のトーンを均一に整えます。
リジュビネーション
コラーゲンの生成を促進し、肌の引き締めやハリを改善するため、リジュビネーション治療にも適しています。
| エクセルVタイトニング | エクセルVホワイトニング |
|---|---|
| ロングパルスNd:YAGレーザー(1064nm)を使用し、肌の深部にエネルギーを届けてコラーゲン生成を促進し、肌を引き締めます。 | ロングパルスKTPレーザー(532nm)を使用し、メラニンとヘモグロビンに対する選択性が高く、シミや赤ら顔の改善に効果的です。 |
エクセルは、これらのモードを組み合わせることで、皮膚の浅層から深層まで幅広い治療が可能です。特に、血管拡張症や肝斑治療での効用が高く、また顧客認知の比較的高いジェネシスにも対応できるので、美肌治療を推し進める予定のクリニックにとっては、非常に適した治療器と言えます。
用途によっては、ピコレーザーの導入が不要な場合もあります。エクセルは、既存のレーザー治療機器と比較しても高い効果を発揮し、患者の多様なニーズに応えることができます。
ピコレーザー
例:エンライトンⅢ
ピコ秒レーザーは、非常に短い時間で高エネルギーのレーザーパルスを発することで、皮膚へのダメージを最小限に抑えつつ、効果的にシミやカラータトゥーを除去する技術です。ピコ秒は1兆分の1秒という非常に短い時間単位で、従来のナノ秒レーザー(10億分の1秒)よりもさらに短いパルス幅を持つため痛みを感じづらいです。
ピコスポット
局所的に高出力のレーザーを照射し、シミやそばかすを少ない回数で除去します。治療後は薄いカサブタが形成され、1週間程度で剥がれ落ちます。
ピコトーニング
低出力のレーザーを均一に照射し、くすみや肝斑を改善します。ダウンタイムがほとんどなく、繰り返し行うことで全体的な肌のトーンアップが期待できます。
ピコフラクショナル
マイクロドット状にレーザーを照射し、肌の深部に小さな空胞を作り、コラーゲンやエラスチンの生成を促進します。これにより、毛穴やニキビ跡、小じわの改善が期待できます。
ピコ秒レーザーはその高い効果と低ダメージから顧客ニーズが非常に高く、近年では多くの美容クリニックで導入が進んでいます。ただし、導入コストが高いのがネックとなることもあります。
HIFU
例:ウルトラセルQ+
HIFU(高密度焦点式超音波)は、高密度の超音波エネルギーをターゲット層に集中させることでコラーゲンの再生を促し、肌の引き締めやリフトアップ効果を得る医療機器です。ウルトラセルQ+は、このHIFU技術を用いた非侵襲的なリフトアップ治療機器です。
ウルトラセルQ+は、熱エネルギーを利用して治療を行うため、脂肪溶解にも効果があるとされています。そのため、痩身治療にも活用できますが、クールスカルプティングなどの専用機器に比べると集客力はやや劣るかもしれません。
HIFUは非侵襲的とはいえ、筋膜にまで届く熱エネルギーを照射するため、医療機器として使用されるべきですが、エステサロンでの導入が相次ぎ、悪い意味でも話題となっています。それでも、ニーズが衰えた兆候は見られず、肌のハリや小顔治療を積極的に展開予定のクリニックにとっては、検討すべき機器となるでしょう。
脱毛
例:ライトシェアデュエット
脱毛は脱毛部位や1回あたりの照射時間(面積)によって機種を揃える方が効率的な運営が行えるため、脱毛治療の比重しだいで導入する機種は変わってきます。
ライトシェアデュエットは、レーザー脱毛機器の中では汎用的に使いやすい定番機種です。ダイオードレーザーを用いて、毛根に直接作用し、毛の再生を抑制するタイプなので幅広く利用できます。大きなハンドピースを使用することで、広範囲の脱毛にも短時間で対応できます。
CO2レーザー
CO2レーザーは、波長10,600nmの遠赤外線を発するレーザーで、水分を多く含む組織に対して高い吸収率を持ちます。この特性を利用して、組織を蒸散・蒸発させることで、切開や凝固、蒸散を行います。
ホクロ除去やイボ治療を行わないなら美容クリニックでは活躍の場が少ないかもしれませんが、比較的安価に導入できる機種もあるので意外と導入率は高いように思います。
シンプルゆえに機種によって性能差がはっきりと照射痕で分かると言われていますので、モデルが用意できるならデモ比較しても良いかもしれません。
なお、上記の機器類を全て揃えると4000万円近くかかります。
また紹介した機材のほとんどはカートリッジやチップなど消耗品を必要とします。1回あたりの使用料に換算しても数千円~数万円程度するものもありますので、ランニングコストも踏まえて予算を確保しておく必要が出てくるでしょう。
設備
”手術室”は不要
多くの美容クリニックの診療メニューで診療所開設にあたり手術室を求められることはありませんが、ヤバいかな?と思ったら物件契約前に必ず保健所へ相談することをお勧めします。

手術室を設置するにはコスト面だけでなく物件の選定にも大きくかかわってくるからです。
移動式無影灯
通常の無影灯は約200万円ほどしますが、移動式無影灯であれば安価に購入することもできます。
二重術程度のオペのみであれば移動式無影灯を採用しているケースが多いです。価格面だけでなく、車輪付きのスタンドに取り付けられており、院内の様々な場所に簡単に移動できるもメリットです。これにより、処置室だけでなく、診察室でも使用可能になります。
笑気吸入鎮静器
美容クリニックでは欠かせない機器です。新規購入でも納期に時間がかかることがあるので、早い段階で確保に向けた動きをした方が良いでしょう。サイコリッチは中古で安く見つかればラッキーです。
ガス(笑気ガスなど)
開院地域に対応している医療ガス販売店を探す必要があります。新規契約の場合は納品が後回しにされやすく、少量追加購入の納期も遅くなりがちです。保管面積を取られ、また移動も重くて大変ですが、多め・早めの発注が安心です。
滅菌機
オートクレーブは必須です。美容皮膚科メインであればガス滅菌機は不要な場合が多いですが、チップの再利用等を想定する場合には必要となってきます。ただし、チップの再利用はたとえ患者毎の保管・利用を前提としてもメーカーは非推奨ですので、わざわざこのためだけにガス滅菌機を導入するのは費用対効果が低いかもしれません。
また、滅菌機そのものは50万円~100万円程度で購入できますが、余剰ガスの排気工事が別途必要となり、場合によっては同額またはそれ以上かかることもあります。
施術ベッド
電動昇降式のベッドでもこだわりがなければ数万円で購入できます。ごく標準的なタイプのものでも1台20万円程度です。
冷蔵庫・冷凍庫
大抵の製剤は冷蔵または冷凍保管です。またクーリング用のアイスノンなど業務利用の冷蔵庫は必須となります。製剤によっては厳格な冷凍保管が求められるものもあるので、専用冷凍庫を準備する必要もあるかもしれません。
運営に必須な機器・物品などを調べる
美容クリニックで実際に購入している物品や機材の中から運営上必須なものをすべて紹介しています。
美容クリニックの機器・設備にかかる費用
医療機器の価格が高すぎて設備や器具の金額を見ても誤差のような感覚になってしまうと思いますが、今回省略した事務デスクやPC、電子カルテなどを含めると5000万円程度は見込んでおく必要があり、この金額が美容クリニックの開業に必要な最低限度の設備予算ということになります。
美容クリニックの開業には、多額の初期投資が必要ですが、適切な機器と設備を整えることで、患者に高品質な治療を提供することができます。最新の医療機器を導入し、快適で清潔な内装を整えることで、患者の満足度を高め、クリニックの成功につなげることができます。開業を目指す方々は、しっかりとした計画と予算管理を行い、理想のクリニックを実現してください。
