美容クリニックの開業を考えている方にとって、資金計画は最も重要なステップの一つです。この記事では、開業に必要な初期費用とランニングコストについて詳しく解説し、成功するための資金計画の立て方を紹介します。
初期費用の内訳
美容クリニックの開業には、以下のような初期費用がかかります。一般的に、美容クリニックの開業には5,000万円以上かかるケースが大半で、都心部での開業では1億円を超えることも稀な話ではなくなってきている印象です。
初期費用の内訳
- 物件取得費用: 賃貸の場合は敷金・礼金、購入の場合は物件価格。
- 内装工事費用: クリニックのデザインやレイアウトに合わせた内装工事。
- 医療機器購入費用: 診療に必要な医療機器や設備の購入。
- 備品・家具費用: 受付や待合室、診療室に必要な家具や備品の購入。
- 広告宣伝費用: 開業前の広告や宣伝活動にかかる費用。
- その他の費用: 許可申請費用や保険料など。
物件取得費用
物件取得費:約500万円~2,000万円
美容クリニックの開業には、まず物件取得費用が必要です。賃貸物件を選ぶ場合、敷金や礼金がかかります。敷金は通常、家賃の数ヶ月分に相当し、5~6ヶ月分を求められることが多いです。それに加え礼金が1~2ヶ月分が一般的です。物件の選定は、クリニックの立地以外にも物件そのもののスペックも考慮して慎重に検討しないと、開業後に「やりたい診療ができない問題」に直面することもあるので注意が必要です。
なお診療関連で3~4部屋つくるには最低でも25坪程度は必要となることが多いでしょう。
| 坪単価 | 35,000円/坪 |
|---|---|
| 25坪の場合 | 6,125,000円 |
| 40坪の場合 | 9,800,000円 |

開業までの賃料:3~6ヶ月
賃貸契約完了後に内装工事に着手です。そのため、どんなにスムーズな行程を踏んだとしても3ヶ月程度は無収入状態で賃料が流出していくため、物件取得費+3~6ヶ月分程度の家賃費用を見込んでおく必要が出てくるということです。
なお、物件によってはフリーレント交渉(数ヶ月間の賃料無料)が可能な場合もあります。契約後には交渉できないので注意が必要です。
内装工事費用
内装工事費:約500万円~2,000万円
内装工事費用は、こだわり方で費用に差が出るため一概には言えませんが、処方専門クリニックでないかぎり最低限度の設備(パーテーションで区切るだけ)で開業するのはリスクが高いです。美容クリニックは、患者のプライバシーやリラックスできる環境に配慮し、またエントランスや待合なども一般クリニックよりも華美に仕上げることが多く、結果として内装費が坪単価20万を切るケースはほとんどありません。
また内装工事は見積が安い業者を闇雲に選ぶのではなく、診療所工事の知見を持った業者かどうかも確認するようにしましょう。診療所の設計経験がないと許認可取得の条件をクリアできず途中で設計変更をするケースもあります。そうなってしまうと追加工事費や工期の延長など予期せぬ負担が発生してしまうからです。
医療機器購入費用
医療機器購入費:2,000万円~6,000万円
医療機器は美容診療にあたって必要不可欠と言っても過言ではありません。クリニックの診療内容に応じて必要となりますが、最低でもCo2レーザー、IPL、Nd:Yagレーザーまたはピコレーザー、場合によってはRF、スキンケア関連の機器なども必要となるでしょう。
例えば、レーザー治療機器や美容注射用の機器など、これらの機器は高額なものが多いため、予算をしっかりと計画することが重要です。安い買い物ではないので、機器の選定にあたっては、使い勝手を優先するか、価格を優先するか、話題の機器を導入するか、といった面まで考慮して検討する先生もいます。
| 種類 | 相場価格 |
|---|---|
| IPL | 400万円~800万円前後 |
| CO2 | 200万円~500万円前後 |
| Nd:Yag | 400万円~800万円前後 |
| ピコレーザー | 1300万円~2000万円前後 |
| 脱毛器 | 300万円~600万円前後 |
| HIFU | 400万円~600万円前後 |
| RF | 400万円~700万円前後 |
IPLやNd:Yagレーザー、Picoレーザーなど美容皮膚科でよく使われる機器類は、同一波長の機器でもメーカーによって価格差が激しく、安価な機器は中国・韓国産で、高額な機器は欧米産です。使い手のスキルに加えて実際の臨床では熱損傷にも差が生じるため、はじめての開業でコスト削減目線だけで機器選定するのはお勧めではありません。初期導入費(本体)が安くても消耗品(カートリッジやチップ)が高額な機種もあるので、その点も注意が必要です。
さらに医療機器の多くは輸入品のため為替の影響を受けます。この影響は機器に限らず輸入製剤全般にも言えることで、毎月のように価格改定が行われています。今後の為替変動がどう動くのか予見することは難しいですが、さらに高騰することを踏まえ資金計画する必要があるでしょう。
設備・備品・家具費用
備品・家具:200万円~
造作工事で設備に含まない場合もありますが、受付カウンターや待合椅子、カウンセリング室のデスクや椅子、スタッフルームの机やロッカーなど、挙げればきりがありません。無影灯や場合によってはガス排気など、診療内容によっては工事が必要な設備もあります。患者が快適に過ごせる環境を整えるために必要なアイテムを揃えるだけでなく、診療所として最低限必要な設備もあるため、200万円以内に収めることは不可能に近いでしょう。
通信・電子カルテ等:30万~
特別な事情がない限り電子カルテの導入は必須です。またインターネット回線はもちろん、院内の通信設備や電話、環境音楽、決済導入などのインフラにもコストがかかります。診療方針によってはタブレットの導入なども必要かもしれません。
広告宣伝費用
宣伝費用を過少に見積もっているケースが多い印象です。
ホームページ制作費:200万円~600万円
ホームページは集客上必須です。
美容クリニックのホームページは一般診療クリニックと違い広告色が強くなければ集患に結びつきづらいとされており、安く済ませるクリニックは稀で、初期制作費として200万~600万円程度投じているクリニックが多い印象です。
制作費用は原稿や写真といったものの負担割合でも変わりますし、単純に診療内容が多くページ数が多い場合などもあるので、まずは予算を決めてプロに相談しながら折り合いをつけると良いでしょう。
広告出稿費:100万円~
ご自身でSNSフォロワーで上手くいく算段がついていれば抑えられる費用ですが、開業時点でクリニックの認知を広げる活動に予算を投じないクリニックは開業半年以内に資金繰りで困窮している事が多いです。
当然広告を出稿するには掲示物の制作にも費用が掛かります。効果的な広告戦略を立てるタイミングを開業ギリギリまで放置しておくと、開業後の資金繰りに影響しやすいので、当初の予算としてしっかりと確保しておくことをお勧めします。
採用費・人件費
人員採用費・人件費:300万円~500万円
遅くとも開業1ヶ月前には人材が揃っていることが望ましく、少なくとも開業前の数ヶ月×人数分の固定費が発生します。
また人材紹介会社を利用する場合には想定年収の20~30%程度の手数料がかかります。
その他費用
その他の費用としては、クリニックの開業に必要な許可申請費用や保険料など発生するでしょう。また研修で使用する薬剤や消耗品等の費用も馬鹿にできません。特にチップやカートリッジは1回あたりの原価も万単位に達することがあるからです。
全体感から考えれば誤差のような金額に収まるとは思いますが、0ではないのでこれらの費用も予算に含めて計画を立てることが重要です。
ランニングコストの内訳
開業後のランニングコストも考慮する必要があります。主なランニングコストは以下の通りです。
ご自身の報酬を除いてざっくり600万円/月程度の支出は当たり前のようにかかってくると思います。
ランニングコストの内訳
- 借入返済:開業時の借り入れ返済
- 家賃: 物件の賃貸料。
- 人件費: 医師、看護師、受付スタッフなどの給与。
- 医療材料費: 診療に必要な医療材料や薬品の費用。
- 光熱費: 電気、水道、ガスなどの光熱費。
- 広告宣伝費: 継続的な広告や宣伝活動にかかる費用。
- その他の費用: 保険料やメンテナンス費用など。
借入返済
人件費換算すると1人分以上の金額を毎月支払に充てる感覚です。
イニシャルのほとんどを借入で開業するケースもあります。借入方法によって返済開始時期はバラバラなので開業初期段階では低額で済む場合もありますが、中期的な視点では必ずどこかのタイミングで返済しなければなりません。
家賃
開業後のランニングコストも考慮する必要があります。まず、物件の賃貸料が毎月発生します。家賃はクリニックの立地や規模によって異なりますが、都心部では坪単価4万円以上することもあります。家賃は固定費として毎月発生するため、収入と支出のバランスを保つために重要な要素です。
人件費
人件費は、クリニックの運営において最も大きなコストの一つです。超小規模に開始するのであればご自身(医師)一人いれば開院することに問題はありませんが、予約受付や診療材料の在庫管理、発注、会計等々をひとりですべて行うのには限界があるため、看護師1名以上の雇用が必要になるでしょう。看護師の給与は40万円前後、受付スタッフでも25万~30万円程度が相場ですが、これに凡そ25%程度の社会保険料の負担も考慮する必要があります。優秀なスタッフを確保するためには、適切な給与を支払うことが重要です。また、スタッフのモチベーションを維持するための福利厚生や研修費用も考慮する必要があります。
医療材料費
医療材料費は、診療に必要な医療材料や薬品の費用です。美容クリニックでは、仕入原価の高い注入剤や照射カートリッジなどを多量に消費していきます。これらの費用は指名買いに近いものでコスト削減が非常に難しいので、開業当初から診療メニューを広げ過ぎると材料費負担も相当な金額になってきます。また集客見込が不明な中で使用期限内に消費しきれず無駄にすることもあるので計画は非常に重要です。
固定費
水道光熱費、通品費のほか、税理士・会計士等への報酬や電子カルテ等のサブスク費用などです。これらの費用は月々50万円〜100万円程度は想定しておく必要があります。
光熱費は季節や診療内容によって変動するため、効率的なエネルギー使用を心がけることが重要です。例えば、LED照明の導入やエネルギー効率の高い機器の使用などが考えられます。
なお空調設備はビル所有の事もあり、年代物の空調設備が設置されていることもあります。契約前の交渉として空調設備の更新もアリでしょう。
資金調達方法
美容クリニックの開業資金を調達する方法はいくつかあります。
資金調達方法
- 自己資金: 自己資金を用意することで、借入金の負担を軽減できます。
- 銀行融資: 銀行からの融資を受けることで、必要な資金を調達できます。事業計画書の作成が重要です。
- 政府の助成金・補助金: 政府や自治体からの助成金や補助金を活用することも可能です。
- 投資家からの資金調達: 投資家からの出資を受けることで、資金を調達する方法もあります。
自己資金
美容クリニックの開業資金を調達する方法はいくつかあります。まず、自己資金を用意することが考えられます。自己資金を多く用意することで、借入金の負担を軽減することができます。自己資金が不足している場合は、家族や友人からの借入れも検討することができます。ただし、自己資金だけで全額を賄うのは難しい場合が多いため、他の資金調達方法も併用することが一般的です。
銀行融資
銀行融資は、開業資金を調達するための一般的な方法です。銀行からの融資を受けるためには、詳細な事業計画書を作成する必要があります。事業計画書には、クリニックのコンセプトや経営方針、収支計画などを具体的に記載します。銀行は、事業計画書を基に融資の可否を判断するため、しっかりとした計画を立てることが重要です。また、融資を受ける際には、担保や保証人が必要となる場合があります。
政府の助成金・補助金
政府や自治体から提供される助成金や補助金を活用することも一つの方法です。これらの資金は低利または返済不要なものもあるため、時間的に余裕があるなら検討の価値があります。というのも、助成金や補助金の申請には、一定の条件や手続きが必要となる割にイニシャルコストに占める割合(金額)は少額になってしまうため、コスパが高いとは言い切れないからです。開業を意識し始めている方は、余裕のあるうちに情報を収集しておくとよいでしょう。
投資家からの資金調達
企画提案力に自信があれば、投資家からの出資を受けることで開業資金を調達する方法もあります。さらにこの業界では「投資家からの逆提案も存在するので、十把一絡げに「投資家」と勢いで関係を築くと後々公開することもあるので注意が必要です。いずれにせよ契約内容や出資条件については、慎重に検討する必要があります。
資金計画の立て方
成功するためには、詳細な資金計画を立てることが重要です。以下のポイントを押さえて計画を立てましょう。
資金計画の立て方
- 初期費用とランニングコストの見積もり: 具体的な費用を見積もり、必要な資金を把握します。
- 収支計画の作成: 月々の収入と支出を予測し、収支計画を作成します。
- 資金調達計画の策定: 資金調達方法を検討し、具体的な計画を立てます。
- リスク管理: 資金不足や予期せぬ出費に備えて、リスク管理を行います。
初期費用とランニングコストの見積もり
成功するためには、詳細な資金計画を立てることが重要です。まず、初期費用とランニングコストの見積もりを行い、必要な資金を把握します。初期費用には、物件取得費用や内装工事費用、医療機器購入費用などが含まれます。ランニングコストには、家賃や人件費、医療材料費などが含まれます。具体的な費用を見積もることで、資金計画の基礎を固めることができます。
収支計画の作成
次に、月々の収入と支出を予測し、収支計画を作成します。収入には、診療報酬や保険収入、自由診療の収入などが含まれます。支出には、家賃や人件費、医療材料費、光熱費などが含まれます。収支計画を作成することで、クリニックの経営状況を把握し、収支のバランスを保つことができます。また、収支計画は銀行融資の審査にも重要な要素となります。
資金調達計画の策定
資金調達計画を策定する際には、自己資金や銀行融資、助成金・補助金、投資家からの出資など、複数の資金調達方法を検討します。各方法のメリットとデメリットを比較し、最適な資金調達方法を選択します。また、資金調達のタイミングや手続きについても計画を立てることが重要です。資金調達計画をしっかりと立てることで、開業資金の確保がスムーズに進みます。
リスク管理
資金計画を立てる際には、リスク管理も重要です。資金不足や予期せぬ出費に備えて、余裕を持った計画を立てることが必要です。例えば、予備資金を確保することで、急な出費にも対応できるようにします。また、収入が予想よりも少ない場合に備えて、コスト削減の対策を考えておくことも重要です。リスク管理を徹底することで、安定した経営を実現することができます。
まとめ
美容クリニックの開業には多くの準備と資金が必要ですが、詳細な資金計画を立てることで成功への道が開けます。初期費用とランニングコストをしっかりと把握し、適切な資金調達方法を選びましょう。
この記事が、あなたの美容クリニック開業の一助となることを願っています。
